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東京高等裁判所 平成元年(行コ)113号 判決 1990年1月30日

控訴人(原告) 吉田禎孝

被控訴人(被告) 神奈川県知事

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

一  控訴人は、「原判決を取り消す。被控訴人が昭和六三年七月一日付けでした社団法人神奈川県警親会の定款変更認可処分を取り消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、主文と同旨の判決を求めた。

二  当事者双方の主張は、当審における控訴人の主張を次のように加えるほか、原判決の事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

(控訴人の主張)

知事の所管に属する公益法人の設立等に関する規則(昭和二九年六月二五日神奈川県規則第四〇号)九条は、定款の変更認可申請手続につき、「法人は、定款の変更について認可を受けようとするときは、認可申請書に次に掲げる書類を添えて知事に正副二部を提出しなければならない。」と定め、その(1)として、「変更条項に係る新旧比較対照表及び変更の理由を記載した書類」を掲げている。この規定は、公益法人が定款変更決議をするには、総会においてあらかじめ会員に配布された定款変更の提案理由書及び「新旧対比」の議案書によって十分審議しなければならない旨を定めたものであり、それが定款変更の認可についての要件となるものである。

被控訴人は、昭和六三年六月一三日、控訴人から、警親会の定款改正認可申請不認可申入書(甲第一号証)の交付を受け、また、本件決議後、警親会から、本件総会の議事録(乙第一号証の一)及び定款改正の提案理由書、同添付の定款改正案(乙第一号証の三)の交付を受けて、本件決議に控訴人主張のとおりの違法事由があり、前記規則九条に違反することを知ったのであるから、本件決議の適法性について審査する義務があるというべきである。

三 証拠関係<省略>

理由

一  当裁判所も、控訴人の被控訴人に対する本訴請求は理由がなく、これを棄却すべきものと判断する。その理由は、当審における控訴人の主張に対する判断を次のように加えるほか、原判決の理由説示のとおりであるから、これを引用する。

控訴人主張の規則九条は、定款の変更認可申請手続をする際に提出すべき書類を掲げた手続規定であって、これを控訴人主張のような趣旨の規定であると解することはできない。また、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第一号証、原本の存在とその成立に争いのない乙第一号証の一・三及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人は、本件認可処分をする前に、控訴人及び警親会から、それぞれ控訴人主張の書類(右甲第一号証、乙第一号証の一・三)の交付を受けたことが認められる。しかし、これらを閲読しただけでは、本件決議に違法事由があると判断することはできないし、これらが提出されたことによって被控訴人に本件決議の適法性について審査する義務が生じたものということもできないから、本件決議の違法に関する控訴人の主張は、採用することができない。

二  よって、原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 橘勝治 安達敬 鈴木敏之)

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